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2009/12/01


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青色LED訴訟の「真実」 問われる相当対価「604億円」の根拠

 source : 日経ものづくり 2004年6月号 (クリックで引用記事開閉)

高輝度青色発光ダイオード(LED)や青紫色レーザダイオード(青色LD)などの製造方法をめぐる特許訴訟。沈黙を破った日亜化学工業の主張をきっかけに,本誌は独自に検証を開始した。その結果,原告である中村修二氏の主張とは反する「事実」を得た。東京地裁は中村氏の主張をほぼ全面的に受け入れ,巨額の相当対価の支払いを日亜化学工業に命じている。この判決の根拠となった「404特許」の効力と,中村氏の貢献の度合いについて,日亜化学工業の主張との対立点を改めて検証する。

高額対価の算出根拠となった
実施料率と貢献度の高さに疑問符

Part 1―二つの争点

中村修二氏が発明した,窒化ガリウム(GaN)系化合物の製膜装置に関する特許第2628404号(404特許)。この特許に関して東京地方裁判所は極めて高額の相当対価をはじき出した。「基本特許」であり「個人的能力と独創的な発想」に基づく発明という判断からだ。結果,仮のライセンス実施料率は「20%」,発明者の貢献度は「50%」と破格のもの。だが,検証を進めるとこうした判断に対して疑問が生じてくる。

2004年1月30日,東京地方裁判所は産業界がかたずをのんで見守る特許訴訟に判決を下した。「被告(日亜化学工業)は原告(中村修二氏)に対し,200億円を支払え」。

個人が起こした裁判として前代未聞となる高額の支払いを認めたこの判決は,高輝度青色発光ダイオード(LED)や青紫色レーザダイオード(青色LD)の製造方法に関する特許訴訟に対してのもの。現在University of California Santa Barbara校教授の中村修二氏が,かつて所属していた日亜化学工業を訴えている。

高輝度青色LEDや青色LDは,窒化物半導体の光素子(光デバイス)。具体的には,窒化ガリウム(GaN)や窒化アルミニウムガリウム(AlGaN),窒化インジウムガリウム(InGaN)といったGaN系化合物を,ごく薄い結晶膜として基板の上に順次積層(成長)させていくことで高輝度青色LEDや青色LDを作製する。

中村氏はこうしたGaN系化合物を製膜する手法として独自の「ツーフローMOCVD(有機金属を使う化学的気相成長法)」と呼ぶ装置を考案し,1990年10月にこの発明を特許第2628404号(404特許)として出願したのである。発明者は中村氏,出願人は日亜化学工業だった。

それから10年以上経過した2001年8月23日,中村氏は自ら発明したこの404特許に関して「特許権の帰属」と「『相当の対価(相当対価)』として20億円」を求めて日亜化学工業を提訴した。その後,前者については中村氏の敗訴となるが,後者については請求額を200億円と10倍に増額して裁判に臨んだ。

これに対して東京地裁は中村氏の請求通りの判決を下す。それだけではない。東京地裁は相当対価の総額を,200億円をはるかに上回る「604億円」と算出したのである。

■ライセンス供与したと仮定

通常,相当対価は,対象となる特許を他社にライセンス供与することで得られる「ロイヤルティー収入」に,発明者の「貢献度」を掛けて計算する。だが,日亜化学工業は404特許を他社にライセンス供与していない。そのため,東京地裁は404特許をライセンス供与したと仮定し,その結果同社が得られるであろう「推定のロイヤルティー収入」を増分利益として設定した。ロイヤルティー収入は,他社の売上高に実施料率を掛けることで計算する。

ここで,推定の他社の売上高は,404特許を独占する日亜化学工業の売上高と,仮にライセンスを供与された場合にその他社が獲得するであろう推定の市場シェアから割り出した。両者を掛け合わせて計算するのだ。

すると,相当対価の算出式は次のようになる。
「相当対価」=「日亜化学工業の売上高」×「推定の他社の市場シェア」×「推定の実施料率」×「原告の貢献度」

このうち,日亜化学工業の売上高に関して,東京地裁は高輝度青色LEDが製品化された1994年度から,404特許が特許としての効力を失う2010年度までを対象とした。つまり,判決時に既に確定していた部分だけでなく,将来にわたる同社の売上高を想定したのである。そして売上高の対象は,高輝度青色LEDや白色LEDなどを含むGaN系LEDと,青色LDを代表とするGaN系LDの両方だ。

2003年度以降の売上高については,
(1)GaN系LEDの市場全体の成長率
(2)日亜化学工業の市場占有率(市場シェア)
(3)日亜化学工業の成長率
―の3点を基に試算し,東京地裁は2010年までの同社の推定売上高を合計1兆2086億円と計算した。

■実施料率は「20%」

続いて,推定の他社の市場シェアについて,東京地裁は日亜化学工業の競合である豊田合成と米Cree社に対して404特許をライセンス供与したと仮定し,両社を合わせた市場シェアを「50%」と決定した。

判決文にはこの市場シェアについて次のような理由が示されている。「青色LED及びLDの市場は,被告会社のほか豊田合成及びクリー社により占められた寡占的な市場であり,証拠上,これら三社の間に,製品自体の競争力のほかにその売上高を大きく左右する事情(例えば企業規模や販売力の顕著な差等)が存在するとは認められない。上記の諸事情を考慮すれば,仮に被告会社(日亜化学工業)が本件特許(404特許)発明の実施を競業会社である豊田合成及びクリー社に許諾していれば,(中略)売上高(1兆2086億円)のうち少なくとも二分の一に当たる製品は,豊田合成及びクリー社により販売されていたものと認められる」。

一方,推定の実施料率に関しては,東京地裁は「20%」という値を採用した。その理由はこうだ。「被告会社(日亜化学工業)が,競合会社である豊田合成及びクリー社に対して,輝度のまさった高輝度青色LED及びLDを製造し続け,市場における優位性を保っているのは,本件特許(404特許)発明を独占していることによるものであり,さらに(中略)諸事情をも合わせて考慮すると,仮に豊田合成及びクリー社に本件特許(404特許)発明の実施を許諾(ライセンス供与)する場合の実施料率は,少なく見積もっても,販売額(売上高)の二〇%を下回るものではないと認められる」。

■原告の貢献度は「50%」

残るは,原告の貢献度だ。ほかにも数多くある特許や,高輝度青色LEDや青色LD,白色LEDなどの研究開発に携わった中村氏以外の貢献者たち,製造部門,営業部門,知的財産部門など会社の他部門の努力がある中で,同氏の発明した404特許がどの程度の貢献を占めるのかが,これによって決まるのである。

東京地裁が出した原告の貢献度は「50%」。判決文は次のように説明する。「本件は,当該分野における先行研究に基づいて高度な技術情報を蓄積し,人的にも物的にも豊富な陣容の研究部門を備えた大企業において,他の技術者の高度な知見ないし実験能力に基づく指導や援助に支えられて発明をしたような事例とは全く異なり,小企業の貧弱な研究環境の下で,従業員発明者が個人的能力と独創的な発想により,競合会社をはじめとする世界中の研究機関に先んじて,産業界待望の世界的発明をなしとげたという,職務発明としては全く希有な事例である。このような本件の特殊事情にかんがみれば,本件特許発明について,発明者である原告の貢献度は,少なくとも五〇%を下回らないというべきである」。

以上から,404特許による相当対価が次のように計算できることになる。
「相当対価」=「1兆2086億円」×「50%」×「20%」×「50%」=「604億円」。

ところが,かたくなに沈黙を守ってきた日亜化学工業が,この特許訴訟に関して本誌に見解を語った1)。その内容は,それまで中村氏がマスコミや著書,裁判で訴えてきた内容を,具体的かつ明解に否定するものだった。特に「404特許は量産工程では使えない」「中村氏の貢献は限定的」という2点は,東京地裁が算出した相当対価に大きく関係する。

■誰も使っていない特許

これらについて本誌が独自に検証すると,次のようなことが分かった。

まず,高輝度青色LEDや青色LDなどの競合他社は,GaN系化合物の製膜方法として別の技術を確立させており,404特許について興味を持ってはいなかったということだ。例えば,日亜化学工業の最大のライバルである豊田合成は,中村氏がツーフローMOCVD装置を開発する以前から製膜方法を確立させていた。Cree社にも404特許の方法を実施している事実は見られない。しかも,1996~1997年ころからは,MOCVD装置メーカーの努力により,良質なGaN系化合物の結晶膜を作製できるMOCVD装置が販売されるようになっていた。

これを踏まえると,東京地裁が推定した実施料率20%という数字は非常に高いことが分かる。それどころか,他社が興味を持たない404特許をライセンス供与し,ロイヤルティー収入を得られるという仮定そのものに無理が生じてくる。

加えて,日亜化学工業の研究者によれば,中村氏の貢献は限定的だという。例えば,高輝度青色LEDを生み出すには,最低でも次の三つの要素技術が必要となる。(1)良質なGaN単結晶(2)p型GaN単結晶(3)InGaN単結晶─だ。このうち中村氏が1人で成し遂げたのは,(1)の良質なGaN単結晶の作製だけ。それも「実験室レベル」であって量産に使える水準ではなかった。同社が高輝度青色LEDを製品化するためには,ほかにも電極の工夫などを要したが,それらにも中村氏は貢献していない。

もちろん,中村氏に対するこうした評価は日亜化学工業の主張だ。同社内部での話であり,完全に客観的な検証はできない。それでも,同社の研究者は「研究記録」に基づいて証言していることに加え,上記の三つの要素技術に関しては同社が達成する以前に,外部の研究者による成功事例があったことは事実だ。いわば,中村氏には「お手本」があったのである。

法廷において中村氏は「青色LEDを独力で発明した」と訴え,東京地裁もそれを支持した。だが,実際には青色LEDの開発には「公知の技術」が存在し,日亜化学工業の研究者によれば,中村氏の貢献は「一部」だった。それに対して貢献度50%という判断には疑問がぬぐえないと言える。

競合の他社も研究者も「使わない」
本当に「ダイヤの原石」と言えるか

Part 2―404特許の現実

「404特許」で作る窒化ガリウム(GaN)単結晶膜を「ダイヤモンドの原石」と訴える中村修二氏。ところが日亜化学工業は,量産には不要と主張する。GaN系半導体デバイスを開発する他の研究者からは404特許に「興味はない」という声が上がる。LEDメーカーも「404特許を使う必要はない」と証言する。GaNの業界では404特許に対する評価は低い。

地方の蛍光体メーカーである日亜化学工業が,世界に先んじて「世紀の発明」とも言われる高輝度青色発光ダイオード(LED)の製品化に成功した。そしてそれを独力でやり遂げたのは,中村修二氏という研究者だった─。

多くのメディアがこう報じ,中村氏は日本の技術者の中で知らない人はいないというほどの「スター研究者」となった。日亜化学工業での「少ない予算」や「乏しい技術やノウハウ」「社長による開発中止命令」などの逆境をはねのけ,たった1人で難題を解決したという,自身が披露した「エピソード」も加味されて,世間では中村氏が起こした訴訟を,簡単に「青色LED訴訟」と呼んでいる。

■1件の特許に関する訴訟

だが,この呼称が,世間の認識に誤解を与える一因となっていることは否めない。例えば,ある大手電機メーカーの社員は「日亜化学工業は青色LEDで莫大な利益を出した。その青色LEDの発明者である中村氏が200億円の相当対価を得るのは当然」と言う。この社員は中村氏が起こした特許訴訟は,「青色LED発明の特許」に対するものととらえているのである。こうした認識をする人は少なくないようだ。

実際には,中村氏が起こした裁判は,窒化ガリウム(GaN)系化合物の単結晶を製膜するツーフローMOCVD装置の特許,つまり,特許第2628404号(404特許)1件に対するものだ。高輝度青色LEDや青紫色レーザダイオード(青色LD)を作るには,GaN系化合物の結晶膜を複数積層させる必要がある。404特許はその製膜に使う技術であり,ほかに数多く存在する工程や技術の一つにすぎない。例えば,日亜化学工業が高輝度青色LEDや青色LD,白色LEDに関連する特許として出願した数は1990~2003年の14年間で847件にも及ぶ。さらに言えば,製膜方法はツーフローMOCVD装置の方法に限られているわけではない。

■404特許が「莫大な利益の源泉」

にもかかわらず,中村氏はこう訴える。「被告会社(日亜化学工業)が市場において圧倒的な競争力を誇る高輝度のLED及びLDについては,本件特許(404特許)権の貢献度が100%であり,その他の技術の貢献度はゼロというべきである。なぜなら,発光素子を構成する窒化物化合物(GaN系化合物)の結晶膜の質がよくなければ,その他の点でいくら優秀な技術を用いても,高輝度の発光素子を製造することはできない。例えていえば,質の高い結晶膜はダイヤモンドの原石なのであり,原石がよくなければ,いくら磨いても高品質のダイヤモンドは得られないのである」。

続けて同氏は「そのことは,本件特許(404特許)権を独占する被告会社(日亜化学工業)が,(中略)それなりの代替技術や独自技術を有する競業会社である豊田合成株式会社及び米国法人クリー社に比して,常に何割か輝度の高いLED及びLDを製造し続け,市場における優位性を保ち,限界利益率80%という驚異的な高収益をあげていることに,端的に示されているというべきである」と主張する。

要は,日亜化学工業の高輝度青色LEDや青色LD,白色LEDが同社に高収益をもたらしているのは,良質な結晶膜でできているから。それは404特許だから作製できた。従って,404特許こそが同社の高輝度青色LEDや青色LD,白色LEDの発明の「すべて」であり,高収益の源泉だ─というのが中村氏の主張である。

同氏の著書「赤の発見 青の発見」(西澤潤一・中村修二共著,白日社)には以下のような記述がある。「『ツーフローMOCVD』ができてからは,何をやっても,数カ月単位で窒化ガリウムの世界でブレークスルーが達成でき,それが現在まで続いています。

つまり,『ツーフローMOCVD』という仕組みを実現して以降は,すべてウチが出すデータが世界一なのです。この一〇年近く,ずっと世界一を維持・発展させ続けているんです。だから,『ツーフローMOCVD』が一番大きなブレークスルーだったといえるでしょう。「つくる装置」という根本のブレークスルーを達成したので,その後は,モノのブレークスルーをどんどんしていくことができたのです。

つまり,青色LEDをつくるためのブレークスルーがどんどん達成され,九三年の終わりに最初に製品化を発表しました。その後,九五年に世界初の青色レーザー発振に成功しました。レーザーは九九年に製品化しました」。

そして,東京地裁はこうした中村氏の主張をほぼそのまま採用した判決を下す。「競業会社である豊田合成及びクリー社に比して,被告会社(日亜化学工業)が常に何割か輝度の高いLED及びLDを製造し続け,市場における優位性を保っているのは,被告会社が本件特許(404特許)発明を実施して半導体結晶膜を製造し,他方,本件特許(404特許)権の存在により競業会社である豊田合成及びクリー社が本件特許(404特許)発明を用いて半導体結晶膜を製造することができないことに起因するものといわざるを得ない」。

ところが,その極めて価値の高いはずの発明に対し,中村氏にも日亜化学工業にも関係のない第三者であるGaN系半導体デバイス分野の研究者からは,意外な言葉が聞こえてくる。

■「使う必要がない」と言う研究者

青色LDの開発を目指して研究を進め,1989年に発光層に利用する窒化インジウムガリウム(InGaN)単結晶の作製に世界で初めて成功した,当時NTTの研究者であった松岡隆志氏(現NTT物性科学基礎研究所主幹研究員)は「現在はもちろん,当時(日亜化学工業が高輝度青色LEDの製品化を発表した1993年末ごろ)においてもツーフローMOCVD装置を使ってみたいと思ったことは一度もない」と証言する。

その理由について同氏は「我々は当時,我々が進めてきた(製膜)方法で技術を立ち上げている最中だった。ツーフロー方式に取り組もうとすれば余計なコストが掛かってしまう。そんな資金もなかった」と語る。

ツーフローMOCVD装置の発明である404特許の請求範囲には,次のように記述されている。「加熱された基板の表面に窒素化合物半導体結晶膜をMOCVD法でもって常圧で成長させる方法において,基板の表面に平行ないし傾斜する方向には,窒素化合物半導体の原料となる反応ガスを供給し,基板の表面に対して実質的に垂直な方向には,反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し,不活性ガスである押圧ガスが,基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される,窒素化合物半導体の原料となる反応ガスを基板表面に吹き付ける方向を変更させて,窒素化合物の半導体結晶膜を成長させることを特徴とする窒素化合物半導体結晶膜の成長方法」。

要は,ツーフローMOCVD装置は,その名の通りガスの流れを二つ持ち,横方向から原料ガスとなる有機金属ガリウム(トリメチルガリウム:TMG)とアンモニア(NH3),水素(H2)を流し,上方向からは押圧ガスとなる窒素(N2)と水素(H2)を吹き込む。中村氏は「1方向からガスを供給するだけでは,加熱した基板の高温に起因する熱対流によって反応ガスが舞い上がってしまって高品質な膜ができない」と考え,反応ガスを不活性ガスで上から押さえ付けて基板に蒸着させることを思い付く。この発想を具現化したのがツーフローMOCVD装置だ。

こうして開発したツーフローMOCVD装置により,中村氏は基板であるサファイアの上に良質なGaN単結晶膜を作製することに1990年9月ごろに成功する。さらに1991年2月ころには,サファイア基板とGaN単結晶膜との間に,GaNを使った低温緩衝層(低温GaN緩衝層,または低温GaNバッファ層)を挟み込むことにより「ホール移動度500」(中村氏)という,当時「世界一高品質な単結晶膜」(同氏)を作製した。

■既に良質な結晶の成功例があった

この緩衝層技術は,高輝度青色LEDなどを製品化する上で極めて重要な意味を持つ。製品化に堪え得る高品質なGaN単結晶膜は,この緩衝層技術があってこそ実現するものだからだ。

実は,基板となるサファイアとGaN単結晶膜との間には,原子間の距離の差(格子不整)や熱膨張係数の差などが大きく,これらが製品化に十分足る高品質なGaN単結晶膜を作れない大きな原因となっていた。こうした両層の間にいわゆる“接着性を持つクッション”のような緩衝層を挟むことにより,外観品質が高く,かつ結晶欠陥や転位が少ないGaN単結晶膜ができるのである。

だが,この緩衝層技術を最初に発見したのは中村氏ではない。GaNの分野において,同氏の前には既に二つの成功例があった。

一つは1983年,工業技術院電子技術総合研究所の吉田貞史氏(現埼玉大学工学部教授)のグループが,MBE法と呼ぶ製膜方法により,窒化アルミニウム(AlN)を緩衝層に使ったGaN単結晶膜の作製に成功している。続いて1985年には,名古屋大学教授の赤崎勇氏(現名城大学教授)と同氏の研究室に所属していた天野浩氏(現名城大学教授)が,低温AlN緩衝層を使ってMOCVD装置による高品質なGaN単結晶膜を実現した。

LEDなどの光デバイスではなく,窒化物半導体を使った電子デバイスを研究する産業技術総合研究所(産総研)パワーエレクトロニクス研究センター研究センター長代行総括研究員の奥村元氏はこう語る。「中村氏がツーフローMOCVD装置でGaN単結晶膜を作製する何年も前に,良質なGaN単結晶膜を作る技術を確立させていた研究者はいた。例えば当時,赤崎氏の結晶はホール移動度でいえば300には達していたと思う。(中村氏が強調する)ホール移動度500と300との間には数字上では開きがあるが,実際の結晶の品質は両者の間にほとんど差はない」。

中村氏に先駆けた工業技術院電子技術総合研究所からも,赤崎氏や天野氏のグループからも,ツーフローMOCVD装置を使ったという論文などは見られない。天野氏は原料ガスを流す石英ガラス管などを自ら細工しながら,サファイア基板の上方から原料ガスを高速に流す独自のMOCVD装置を開発している。奥村氏も「ツーフロー方式など使っていない」。GaN分野の研究者からは,ツーフローMOCVD装置に関心を持つという話は聞こえてこない。

■競合メーカーも「無関心」

研究者だけではない。LEDメーカーの間でもツーフローMOCVD装置に対する関心は低いようだ。例えば,日亜化学工業の最大のライバルである豊田合成は「ツーフローMOCVD装置を使っている事実はない」と,豊田合成の情報に詳しいあるLEDメーカーの幹部は語る。

この幹部の主張には裏付けがある。日亜化学工業と豊田合成との間で繰り広げられた,青色LEDなどをめぐる一連の特許係争だ。1996年8月から始まった両社の間の特許係争は,2002年9月17日に全面和解することで終結する。6年間にも及ぶこの特許係争は,「InGaN層の成長方法」の1件を除いて,すべてチップの構造に対する特許で争っていた。この中に,GaN単結晶膜の製造方法に関する特許で争った形跡は見られない(表)。

豊田合成は1986年ころから青色LEDに関して赤崎氏と共同研究を開始している。先述のように,赤崎氏と天野氏が中村氏の6年も前に良質なGaN単結晶膜を作製できていた事実を踏まえると「豊田合成にツーフローMOCVD装置は不要」(前出の幹部)という主張に無理はない。

日亜化学工業のもう一つのライバル,米Cree社については「特許公報等の資料によれば,競業他社である豊田合成やクリー社は,いずれも本件特許(404特許)権の方法とは異なる独自のMOCVD装置を使用している」と日亜化学工業は主張し,このことは中村氏も裁判で認めている。

産総研の奥村氏はGaN単結晶の作製について次のように説明する。「GaN単結晶膜の作製で重要なのは,基板上で起きる原料ガスの化学反応を制御すること。直接結晶膜を制御するのが理想だが,それはできないため,一つの方法としてガスの流し方を工夫する。要は,良質なGaN単結晶膜を得ることが目的なのであって,それが得られるのであれば,どのようなガスの流し方をしても構わない。ツーフローMOCVD装置のガスの流し方は『One of them』でしかない」。NTT物性科学基礎研究所の松岡氏の説明もこの意見に一致する。「GaNの結晶成長方法は何でもよい。ツーフロー方式はそのうちの一つにすぎない」。

要するに,良質なGaN単結晶膜を得る方法は,ツーフローMOCVD装置以外にもあったということだ。この事実は「ツーフローMOCVD装置でなければ,高品質なGaN単結晶を得られない」という中村氏の主張を否定する。

■「苦労しなかった」という声も

書籍「『青色』に挑んだ男たち」(中嶋彰著,日本経済新聞社)には,日亜化学工業が高輝度青色LEDを発売した直後である1994年春から,当時ソニーでGaNの研究に着手した河合弘治氏が「苦労を全く」せずに「『横型高流速』タイプの正統的なMOCVD炉で窒化ガリウムの結晶を作った」と紹介されている。

この方法は「やや斜めに置いたサファイア(基板)に向かって,原料ガスを水平方向から高速に吹き付ける。ポイントはただ『ガスの流速を高めて結晶を成長させる』だけである。奇は全くてらっていない」。

ツーフローMOCVD装置で作ったGaN単結晶膜が,ほかの方法より特に良質であるともいえない。前出の書籍「赤の発見 青の発見」には,中村氏自身による発言が見られる。「MOCVDは最初は市販のものを購入したんですが,それを改造して,自分でツーフローMOCVDという新しい装置をつくっていったんです。それでつくった結晶が『いい』と一言では言えないんですね。窒化物というのは不思議な結晶で,転位の数は一〇の一〇乗個くらいもあるんです。現在製品化しているものの結晶でも,ですよ。これは,ガリウム・ヒ素などではまったく考えられないほど欠陥だらけの結晶です。それでもよく光るんです。(中略)結晶成長の装置というのはいろいろあると思うんですけど,結晶の質を評価すると,よその製品より優れているというよりはむしろ劣っているんです。悪いのによく光るんです。だからナイトライド『窒化物』というのは非常に不思議な結晶なんです」。

■汎用機で「作れる」

あるMOCVD装置メーカーからは次のような声が上がる。「ツーフロー方式の装置など作っていない。今は1方向からガスを流す汎用のMOCVD装置で良質なGaN系結晶膜を作れる」。

これに対してNTT物性科学基礎研究所の松岡氏からも「恐らく,ツーフローMOCVD装置を使っているとしたら日亜化学工業だけだろう。何年も前から既成の縦型MOCVD装置で良質な結晶の成長ができている。わざわざツーフロー方式にする必要はないと思う」という意見が聞こえてくる。

中村氏がツーフローMOCVD装置を開発した1990年代初頭には,GaN専用のMOCVD装置は販売されていなかった。だが,その後「メーカーの技術が向上し,既成のMOCVD装置でユーザーが特に苦労せずに,中村氏が実現した程度の良質なGaN単結晶膜ができるようになった」と前出のMOCVD装置メーカーは語る。

窒化物半導体の研究者からはこうした証言も得られる。「GaN単結晶膜の高品質化に関する論文が出ていたのは1996~1997年ぐらいまで。その後は結晶の品質の話題はなくなった」(産総研の奥村氏)。

たとえ他の研究者や企業が興味を示さなくても,日亜化学工業が量産工程に使用しているのであれば,ツーフローMOCVD装置にそれ相応の価値はあるだろう。ところが,同社はツーフローMOCVD装置は「再現性が極めて悪く,工業化には不向き」と主張し,その理由として「わずかな反応回数によりGaN結晶物が押圧ガス副噴射管及び原料ガス噴射管に付着し」てしまうことなどを裁判で訴えた。

■ツーフロー方式で「量産は無理」

当初日亜化学工業は,中村氏が発明したツーフロー方式を基に,上方から基板に向けて流す押圧ガスの最適な圧力を調整したMOCVD装置により高輝度青色LEDの製品化を進めていた。同社もこれは「せいぜいその(中村氏の)改良発明に当たるものでしかない」と認めている。だが,その後,同社は「量産性の低いツーフロー方式を諦め,平成9年(1997年)4月15日以後は,すべてのMOCVD装置につき,本件特許(404特許)発明とは別個の技術思想に基づく発明である被告現方法(現在量産工程で使用しているMOCVD装置)を実施して,高輝度青色LED及びLDの全製品を製造している」と主張する。

こうした現在のMOCVD装置を日亜化学工業は内製したという。同社で高輝度青色LEDの量産工程に関わった小山稔氏は自著「青の奇跡」(白日社)でこう記す。「量産対応のMOCVD装置は,社長の陣頭指揮で社内製作が決定した。装置自体の製作に,自社内でも取り組むことになった。(中略)当然ながら,基礎実験の装置と量産装置とでは,考え方を変える必要もある。いわば「原型」とも言える(中村氏の)MOCVD装置は,実験・研究に徹底的に使用され,原型をとどめないほど改善しつくされていた。そこで,量産化を目標において,この装置を分解し,構造,部品の細部にわたって検討が加えられたのである。社内の生産技術部門の人々が,実験,研究者とチームを組んで,新規な日亜製のMOCVD装置を作り上げていった」。

これに対して中村氏は「現在の(製膜)方法も404特許の延長線にある方法に間違いない」と反論する。

だが,前出の書籍「『青色』に挑んだ男たち」の中で,当時ソニーの河合氏はこう発言している。「この(ツーフローMOCVD)装置はガスの微妙なバランスの上に成立しているので『プロセス・ウインドウ(窓)』(反応条件の許容範囲)が狭く,量産を目指したスケールアップが難しい装置」。

産総研の奥村氏も「ツーフロー方式は正直トリッキーな方法であり,決してスマートな方法とはいえない。この方法では乱流が発生しやすく反応ガスの制御性に劣るからだ」と評価する。

以上,GaNの技術に詳しい第三者の証言をまとめると「404特許は量産工程に向かず,GaNには404特許のほかに製膜方法が存在する。そのため,競合他社も他の研究者も404特許を必要としない」―ということになる。

こうした特許を「基本特許」と判断し,競合他社にライセンスしたら「実施料率20%」が得られるとする東京地裁の判断に納得できないのは日亜化学工業ばかりではないだろう。

p型化も発光層も他の研究者の功績
中村氏の貢献はあくまで単結晶膜の作製

Part 3―本当の発明者は誰か

「夢と言われた青色発光ダイオードを独力で発明した」と裁判所で陳述した中村修二氏。ところが,実質的な同氏の功績は「GaN(窒化ガリウム)単結晶膜の作製だけ」。発光に必要な結晶のp型化や,高輝度のための発光層の作製は若手研究者たちが成し遂げた。同氏は電極の工夫や量産工程には全く,青紫色レーザダイオード(青色LD)にはほとんどかかわっていない。日亜化学工業に残る「研究記録」によれば,中村氏は青色LEDの発明者ではない。

日亜化学工業の高輝度青色発光ダイオード(LED)や青紫色レーザダイオード(青色LD)の研究者である長浜慎一氏は言う。「中村修二氏が日亜化学工業を退社した後,ある学会で私が研究成果を発表した。発表後,ソニーの研究者が近づいてきて私に尋ねる。『青色LEDもLDも中村さんが1人でやったっていうのは本当ですか?』。私は『本当にそう思いますか?物理的に不可能でしょう?』と答えた。するとその研究者は『そうですよねえ』と大きく何度も頷きながら帰っていった」。

日亜化学工業の高輝度青色LEDや青色LDの性能は,発売当時から今なお大手電機メーカーをしのぐ。しかもそれを中村氏が「独力で発明した」という主張が,講演やメディアなどを通じて流れてくる。だが,その主張と研究開発の難易度とのあまりものギャップに,ソニーの研究者も疑問がぬぐえず,思わずこうした質問を長浜氏にぶつけたのだろう。

■成果は「GaN単結晶のみ」

中村氏の「真の貢献」について,長浜氏と同じく日亜化学工業の研究者である岩佐成人氏と山田孝夫氏,成川幸男氏の3人の主張は一致する。「青色LEDを作るために窒化ガリウム(GaN)を選んだこと。研究開発面で本当に1人で成し遂げたことは,GaN単結晶を作製したことだけ」。しかも,同じく研究者の向井孝志氏と妹尾雅之氏は「それも実験室レベル。量産工程での貢献は全くない」と証言する。

高輝度青色LEDや青色LDが光を放つには,三つの要素技術が必要となる。
①下地層となる良質なGaN単結晶
②p型GaN単結晶
③発光層である窒化インジウムガリウム(InGaN)単結晶
―だ。日亜化学工業にとっては,これらのすべてが「公知の技術」だった。

中村氏がツーフローMOCVD装置で(1)のGaN単結晶膜の作製に成功したのは1991年2月ころだが,当時名古屋大学の赤崎勇氏と天野浩氏のグループは1985年にMOCVD装置を使ってそれを成功させ,1986年には論文を発表している。(2)のp型GaN単結晶については,同じく赤崎氏と天野氏のグループがマグネシウム(Mg)をドープしたGaN単結晶膜に電子線を照射することで世界で初めて作製することに成功したと1989年に発表した。(3)のInGaN単結晶は,1989年に当時NTTの松岡隆志氏が世界で初めて作製したと発表している。「1989年から青色LEDの研究開発を開始した日亜化学工業では,先行する赤崎氏や松岡氏の論文を追試し,製品化することが目標だった」と,当時を知る向井氏と妹尾氏は言う。

中村氏は,赤崎氏のグループのGaN単結晶膜の水準に1年半~2年ほどで追い付いた。そして,さらに結晶の品質を高めることに懸命になる。

■2人の研究者が発見したp型化

ところが,三つの要素技術の中で当時最も難しいと考えられていたのは,GaN単結晶のp型化だった。赤崎氏のグループが電子線照射によるp型化を発表していたが,他の研究者が追試しても簡単には再現できない状況にあったからだ。この難易度の高いp型化を日亜化学工業で実現したのは,中村氏ではなく,妹尾氏と岩佐氏である。

入社2年目の1991年,妹尾氏は研究目標としてp型化を掲げる。「自発的なもので,中村氏に命じられたものではない」(同氏)。走査型電子顕微鏡を使って電子線を照射したり,化学処理したりするがすべて失敗する。そしてある時,「電子ビーム蒸着装置」の電子銃を使うことを思い付いて実行すると,強力な電子線で割れた,MgをドープしたGaN単結晶のサンプルがp型化を示していた。

その後,妹尾氏は再現性の実験を繰り返す。確証を得たら中村氏に知らせるつもりだった。ところが,3日ほどたった時に中村氏に見つかり,黙っていたことを怒られたという。2人はこの実験を基に専用の電子線照射装置を外注し,1991年11月に受領した。

だが,結局この電子線照射装置を同社が量産工程で使うことはなかった。1991年に入社した岩佐氏が,わずか6カ月後の同年9月末に,加熱処理によるGaN単結晶のp型化(アニールp型化現象)を偶然発見したからだ。この方が量産性に優れていた。

薄いサファイア基板にGaN単結晶を製膜すると熱膨張の差で反りが発生する。岩佐氏はそれを抑えるために,サファイア基板に液状酸化ケイ素を塗布し,焼き固めることで反りを強制的に抑える方法を試した。そのうち,「加熱すると結晶の質が変わるのではないか」と考えた同氏は,p型GaN単結晶を加熱してみることにした。すると,MgをドープしたGaN単結晶は400℃ほどでp型からn型に変化するが,さらに温度を上げて600℃以上にすると再びp型化することを発見した。この実験を基に「加熱処理だけでp型化できる」と推測した岩佐氏は中村氏に報告する。ところが中村氏は全く信用しなかったため,岩佐氏は再実験して確認した後,報告し直したという。その時にも「そんなはずがない。間違っているだろう」と中村氏に否定されるが,岩佐氏が自信に満ちた態度で断言すると,中村氏は自ら確認実験を行った。

このアニールp型化現象を発見する上で岩佐氏は「中村氏から全く指示は受けていない。入社間もなくてほとんど口を利いてくれなかったほど」と証言する。後に中村氏は,妹尾氏や岩佐氏が実現もしくは発見したp型化現象を,理論を後付けした上で誰にも知らせずに,妹尾氏や岩佐氏と連名の論文として発表する。筆頭者(ファーストオーサー)は中村氏だった。

■量産技術には無関係

InGaN単結晶の作製に関しては,向井氏が中心となって岩佐氏と長浜氏の3人が遂行した。中村氏は岩佐氏と長浜氏に実験の指示を出していた。

1992年1月から青色LEDの開発に着手した向井氏は,引き継ぎのために数カ月かけて中村氏からMOCVD装置の運転の仕方を学ぶ。その途中の同年2月ころ,中村氏は偶然1枚だけInGaN単結晶を作製する。ところが再現性がなく,なぜできたのか分からないまま何カ月も過ぎた。「この間に中村氏はMOCVD装置を使わなくなった」(向井氏)。向井氏は試行錯誤するうちに,最適な条件を見つけ出し,かなり安定してInGaN単結晶を作れるようになったのが同年7月ころである。

ところが,当時のInGaN単結晶はInの含有量が少なく青紫色に光っていた。可視光ではない紫外線の波長を持つため暗い。そのため,不純物をドープすることで波長を青色領域へシフトする,教科書にも載っている「不純物準位による波長シフト」を試みた。ここで長浜氏が「中村氏の指示の下」,亜鉛(Zn)とケイ素(Si)をドープしたInGaN単結晶を作製し,当時の発光層を試作する。

こうして向井氏と岩佐氏,長浜氏の3人はInGaN単結晶を発光層とし,その下の面をn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN),上の面をp型AlGaNで挟んだ「ダブルへテロ」構造の高輝度青色LEDを試作する。この試作を「中村氏は行っていない」(向井氏)。

製品として高輝度に光るためには,電極にも工夫が必要となる。日亜化学工業は,ニッケル金(NiAu)を材料に選び,透けて見えるほどごく薄くした電極を発明し,「透明電極」と名付けた。透明だから光を遮ることがない分,明るくなる。NiAuには低電圧化の効果もあった。これに取り組んだのは,妹尾氏や先の山田孝夫氏,山田元量氏だった。

その後,歩留まりの低いツーフローMOCVD装置を改良し,後にツーフロー方式をやめたMOCVD装置を使って結晶を作るパイロットライン(少数生産ライン)の確立に主に貢献したのが向井氏で,電極を形成したり,保護膜を付けたりといったデバイス工程の主な貢献者が妹尾氏だったという。

日亜化学工業には「研究記録」が残っている。「月報」や「週報」,装置の使用記録などだ。それらによれば,中村氏がMOCVD装置で実験した記録があるのは「1992年2月まで」。月報や週報は「1992年5月まで」。中村氏は1993年までは実験の指示を出していたが,それ以降は自分で実験せず,他の研究者たちの成果を論文にまとめて外部に発表するようになった。論文はすべてファーストオーサーで,特許の発明者にも必ず名前を入れた。マスコミの取材や講演の依頼も同氏が対応した。「受賞時の賞金も同氏が1人で受け取った」(日亜化学工業)。

研究記録に基づく日亜化学工業の研究者たちの証言をまとめると「中村氏は青色LDの発明者ではないばかりか,厳密には青色LEDの発明者とも言えない。しかも量産工程にも全く貢献していない」―ことになる。

にもかかわらず,東京地裁が判断した中村氏の貢献度は「50%」。先の若手研究者たちが言葉を失うのも無理はないだろう。


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