source : 2015.09.10 J-CASTニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
安全保障関連法案に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」の中心メンバー、奥田愛基(あき)氏(23)が、慣れないテレビ出演で苦戦を強いられたようだ。
奥田氏は、2015年9月9日午後にフジテレビで放送された「みんなのニュース」で、自民党が大勝した14年冬の衆院総選挙では安保法案は争点になっていなかった上に、法案の内容や手続きに不備があるなどと主張した。しかし、時事通信社の田崎史郎・特別解説委員が次々と反論。奥田氏は、放送後にツイッターで「思ってたことの半分もちゃんと言えなかった」と反省の弁を述べていた。
■2014年12月の総選挙結果の意味
奥田氏はフジテレビのスタジオへ出向き、番組に20分近くにわたって出演。法案について
(1)日本が他国から攻められた場合は個別的自衛権で対応可能なのに、なぜ集団的自衛権が必要なのか説明されていない
(2)安倍首相が米国議会での演説で15年夏に安保法案成立の意向を示したのはおかしい
、などと主張した。
「なぜ日本の国会が通る前に米国の議会で演説したのか。そういうことを含めて、きちんと説明できていないのではないか。法案の内容にもプロセスにも反対している」
と述べた。
この点について、田崎氏は
「確かに米議会で安倍総理は演説の中で触れているが、その前から、ずっと言われていること。だから議会演説だけを聞いていると目立つが、決してそうではない。集団的自衛権を行使しないと日本を守れない局面もある、というのが政府の解釈」
と奥田氏の主張に反論した。
議論は選挙の正当性にも及んだ。田崎氏は、14年7月1日に憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定した後に行われた同年12月の衆院総選挙で、自民党が大勝したことを指摘。
「そういう意味で、こっち(選挙結果)の方が重要」
と主張した。
■「本当に前回の選挙の時に集団的自衛権が争点になっていたのか」
これに対して奥田氏は、14年12月の選挙でも運動を展開していたとしながら、当時は集団的自衛権は争点になっていなかったとした。
「前回の選挙は『アベノミクス選挙』と言われ、アベノミクスが争点だと首相自身が言っていた。そういった中で過去最低の投票率だった。本当に前回の選挙の時に、集団的自衛権や、集団的自衛権だけじゃないですよね?今回の11法案すべてに関して、争点になっていましたか?そんなこと皆さん、テレビでも取り上げていましたか?選挙の時に」
これに対して田崎氏は
「それは相当取り上げてましたよ。日本記者クラブでの討論会でもやってたし、党首討論でも」
と反論。奥田氏は
「安倍さん個人の意思とか『やりたい』という気持ちのために、国民全員がなぜ付き合わなければならないのか」
とも主張したが、田崎氏は
「それは選挙で選んだから」
と一刀両断。発言しようとする奥田氏を遮る形で伊藤利尋アナウンサーが
「そこがまさに今日のポイントだと思うんですよね。国政選挙で選ばれた政治家の信念、一方で国民の声。そのバランスというのが、ひとつのテーマですよね」
とまとめ、時間切れになった。
■「思ってたことの半分もちゃんと言えなかった。反省」
番組終了後、奥田氏は
「田崎さんテレビを良く分かっておられる。思ってたことの半分もちゃんと言えなかった。反省」
などと反省の弁をツイート。番組では、巨大なパネルに描かれた図やイラストを使って論点を説明していたが、その内容を事前に知らされていなかったことが「敗因」の一つだとみているようだ。
「ていうかフリップの中身知らなかったのが痛かった。なんかおかしいと思ったけど。 あーいうものなんかな」
source : 2015.09.14 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
まずは下記のスピーチ文をご覧いただきたい。
今日はどうしても言いたいことがあって、この場でスピーチさせていただきます。「戦争法案」は絶対に廃案にしなければなりません。こんな政権に日本を任せるわけには行きません。(中略)
僕は周りに政治のおかしさを訴えていきます。戦争を起こして何になりますか。誰が得をしますか。僕ら国民には犠牲しかもたらしません。
そんなに中国が戦争を仕掛けてくるというのであれば、そんなに韓国と外交がうまくいかないのであれば、アジアの玄関口に住む僕が、韓国人や中国人と話して、遊んで、酒を飲み交わし、もっともっと仲良くなってやります。
僕自身が抑止力になってやります。抑止力に武力なんて必要ない。絆が抑止力なんだって証明してやります。
何とも威勢の良いスピーチの主は、福岡県の大学に通う22歳の男子学生、後藤宏基さんである。8月28日、学生団体「SEALDs」が主催する毎週金曜日恒例の安保法案反対デモに参加し、聴衆を前にマイクで高らかに訴えた。どこかの左派メディアのように彼らの活動を諸手を挙げて持ち上げるつもりはないが、自分たちの信念を持って活動を続ける彼らの行動力には脱帽する。とはいえ、彼のスピーチの中身にはいささか首をかしげたくなる部分もあるので、僭越ながら少しだけ苦言を呈したい。
そもそも「戦争法案」などというレッテルを貼り、一方的に批判するのはいかがなものか。安保法案は、他国との戦争を目的にしているわけではない。首相も断言した通り、わが国が他国と「二度と戦争をしない」ための法案である。「徴兵制の復活」などというデマや誤解まで広がっているが、彼らの主張の多くは偏見に満ちている。
それともう一つ、「絆が抑止力」という言葉。中国や韓国といった隣国と交流を深めて、対話による緊張関係の平和的解消を目指すという志は立派だが、自国の利益を最優先に考える外交の世界で、そういう綺麗事だけが罷り通ると本気で思っているのか。ましてや、言葉も文化も価値観もすべて異なり、公然と敵意をむき出しにする相手であっても、気安く対話できる関係を築ける自信がそんなにおありなら、ぜひ今すぐにでもわが国の外交官としてその手腕を発揮してほしい。
これは乱暴な比喩かもしれないが、もし強盗犯が自宅に押し入り、自分の財産を奪い、家人を傷つけるような場面に出くわしても、犯人に自首を促すような冷静な対応が取れる人なんているのだろうか。独り善がりな理想と信念が通用しないのも外交の本質であり、交渉とは相手と同等以上の立場になって、初めて双方が聞く耳を持つ関係が成り立つ。彼の主張は「理想」ではあっても、現実はそんなに甘くはない。
これまた失礼な言い方かもしれないが、後藤さんに限らず、SEALDsという学生団体の活動を見て思うのは、彼らは権力と対峙し、反体制を謳う「反骨」な自分に酔いしれているだけではないのか。彼らが言うように日本と平和を本気で愛しているのであらば、いま現実に起こっている脅威に目を背けず、きちんと向き合って冷静に解決する術を考えるべきではないのか。感情論や精神論ばかりが先立つ主張は、はっきり言って無意味である。デモの参加者が、口汚く現政権を罵っているさまを見ていると、ただただ興ざめするばかりで、彼らの訴えは何一つ心に響いてこない。
それでも、SEALDsの運動をかつての「60年安保闘争」と重ねる向きもある。だが、国会突入を図って警官隊と激しく衝突した当時の勢いとは比べものにならない。主催者がデモの参加者を水増ししたり、仰々しく報道するメディアもあるが、多くの国民は今回の安保法案の成り行きを冷静に見守っている。
60年安保の真っただ中、当時の岸信介首相と対峙し、デモを主導した元全学連のリーダーは、昭和62年に岸元首相が亡くなった際、次のような弔文を書いて、その死を悼んだという。
「あなたは正しかった」
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