source : 2015,10.16 産経ニュース (ボタンクリックで引用記事が開閉)
九州電力川内原発2号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した15日、現地では反原発派が抗議の声を上げた。その反原発派に、地域住民が憤りを募らせる。一部ではあるが、住民に暴言を吐き、無許可でテントを海岸にはるなど問題行動を起こしたからだ。「人として最低限のルールは守れ」。九州のエネルギーを支えてきた小さな街の住民が、県内外から集まる反原発派に「ノー」を突きつけた。
■「戦争と原発はつながる」
川内原発の正門前ではこの日、午前8時から反原発派がマイクを握った。学生らの組織は「安倍ネオファシスト政権打倒! 憲法改悪阻止!」と原発と関係ないことを叫び、拳を突き上げた。
反原発派は全国からやってくる。この日も、鹿児島をはじめ、愛媛や福岡などから集結した。中には、原発だけでなく、安全保障関連法や米軍普天間飛行場の辺野古移設など、政権の方針全てに反対する活動家が含まれる。警察庁が中核派系と認定する「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」(NAZEN)の旗もあった。
■「殴られたいのか」
抗議の様子は、マスメディアやネットを通じて全国に流れるが、地元住民の目は冷ややかだ。
川内原発1号機が再稼働した8月11日。原発周辺で商店を営む50代の女性は、店内で客と会話をしていたところ、県外から抗議行動に参加したという男性から「笑っただろ」と詰め寄られた。男性はさらに「(原発が再稼働する)こんな状況でなんで笑えるのか。殴られたいのか」と怒鳴った。
「体の震えが止まらなかった。家族を通じて警察に通報したけれど、あんな怖い思いは二度としたくない。地域住民が我慢するしかないのは、おかしいですよ」
女性は腹に据えかねた様子で語った。
同日午前6時10分ごろには、原発正門ゲートをふさぐように、反原発派の5台の車両が駐車した。警察が撤去させようとして混乱し、原発前の県道が約1時間、全面通行止めになった。通勤のマイカーや路線バスが足止めとなった。車中には透析のため病院に向かう高齢者もいたという。
不満や不安の理由は他にもある。原発近くの久見崎海岸には、昨年9月から反原発派がテントを張り、居座る。
「異様な光景で、子供をはじめ住民が近づけなくなっている」。地元の男性(56)はこう嘆く。
しかも、テントは無許可だ。海岸を管理する鹿児島県河川課によると、当初、海岸使用の申請はなかった。この点を県が指摘したところ、設置から1カ月たった昨年10月、7人から「再稼働に反対するため」「ウミガメの保護活動」などを理由に申請があった。
鹿児島県は、海岸法に基づく県の要領に沿って審査を始めたが、要領で定める目的に該当しないことから、不許可とした。
以来、県はたびたび撤去を要請するが、効果はない。強制撤去も選択肢だが、テントに居る個人の特定や、弁明の機会を設けるなど、手続きに時間がかかることから、県は踏み切れずにいる。
■住民が要望書
薩摩川内市議の森満(もりみつ)晃氏によると、このほか反原発派の行為として、使用が許可されていない海岸でのイベント▽墓地用の水道水を無断利用して体を洗う▽私有地での無断駐車▽ゴミの放置▽住宅近くでの深夜の徘徊(はいかい)-などが確認された。
我慢を重ねてきた地元住民も立ち上がった。原発周辺の滄浪(そうろう)地区と寄田地区の2つのコミュニティ協議会が9月1日、反原発派を指導するよう求める要望書を、県と薩摩川内市に提出した。反原発派の行動に、住民が声を上げるのは初めてだった。
森満氏は9月15日の市議会の臨時会で「原発再稼働への思いは自由だが、人に迷惑をかける行動は許されない。人として最低のルールを守っていただくよう指導してほしい」と述べた。岩切秀雄市長は「びっくりしている。市民を巻き込んだ抗議活動は許されない。最低限のルールは守ってもらえるよう要請していきたい」と答弁した。
こうした指摘に、「反原発・かごしまネット」代表の向原祥隆氏は「(テント設置は)原発推進派は目障りと思うかもしれないが、表現の自由だ。迷惑を起こしているわけではなく、海を懸命にきれいにしている。暴言なども確認していない。そんな人は出入りしていないはずだ。みんな大人なので、節度ある行動が前提だ」と述べた。
だが、これまでに署名活動の強要や、議会での傍聴席からの、度が過ぎたヤジなど、ルールを無視した反原発派の行動が確認されている。
傍若無人な行動では支持は広がらず、どれだけシュプレヒコールを上げても、その声が民意を動かすことはない。警備当局の関係筋によると「反原発運動は財政的にも厳しい状況になっている」という。
15日、川内原発前に集まった反原発派は約100人、1号機再稼働時の4分の1程度だった。
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