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2019/02/10


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【環境ビジネスの欺瞞】電気代EU第1位…!ドイツの「エネルギー転換」こんなに矛盾だらけ それでもまだ上がるようです

 source : 2019.02.08 川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」 (クリックで開閉)






■ガス火力の微妙な立場




ドイツ南部のバイエルン州(州都はミュンヘン)のイルシングという場所に、ガス火力発電所がある。ドイツの電力大手E.onの子会社、Uniper社の発電所だ。Uniperは、再エネ以外の発電部門を担っている。

イルシングでは、4、5号機が最新鋭。2010年に完成した5号機は、定格出力84.6万kw、熱効率が59.7%。4号機は2011年に完成。定格出力56.1万kwで、熱効率は60.4%。こちらは、Uniperの他、N-ERGIE、Mainova、ENTEGAの3社も出資している。

ガス火力は、立ち上がりが早い。変動が大きい太陽光や風力電気を補うには、理想的な電源といえる。しかも石炭・褐炭火力に比べると、CO2の排出がずっと少ない。イルシング4、5号機は、両方ともコンバインドサイクル発電といって、ガスを燃やして発電をした時に出る蒸気で、もう一度発電をする、世界で一番効率の良いハイテク火力の一つだ。

ところが、この世界に誇るmade in Germanyの新鋭火力が、2013年以後、待機させられたまま、あまり動いていない。イルシング5号機は、2010年は4758時間、2011年は4702時間稼働していたが、2013年にはたったの680時間しか動かなかった。もちろん、これでは儲からない。

株式会社がコスト割れの商売を続けられるはずはなく、E.on社(Uniperの前身)は2012年より新鋭機の廃止を申請していた。ところが、国の系統(ネットワーク)庁が廃止を認めず、待機させられている。

なぜ、こんなことになっているのか?

ドイツの法律では、再エネは発電した電気の全量が買い取られ、優先的に市場に入れられることになっている。需要があってもなくても買い取ってもらえるのだから、日が照って風が吹くと、電気は市場で供給過剰となる。

しかし、その市場はというと自由市場なので、供給過剰になった電気の値段は自由経済の法則通り暴落する。再エネ発電者は、固定価格で買い取ってもらっているので、暴落しても痛くも痒くもないが、他の電源の発電者が、その市場で再エネと価格で競うことは難しい。

そもそも競争の条件がフェアではない。とりわけガスは石炭・褐炭よりも原価がずっと高いので、出番はなかなか回ってこない。

しかし、周知のように、ドイツでは2022年には原発はすべて止まる予定だし、今年1月末に決まったところによると、石炭・褐炭火力も2038年で廃止にするつもりだ。つまり、将来、太陽が照らず、風力がないとき、頼りになるのは、まもなくガス火力しかなくなる。

だから、イルシングの4、5号機は、出番がなくても補欠バンクに座らされたまま、退場が許されないわけだ。裁判に訴えてもダメで、Uniperにすれば、「だったら、待機の補償費をもっと値上げしろ」といったところだが、目下のところ膠着状態だ。

■電気代がまた上がる

ところが今年の1月、びっくりニュースが出た。イルシング6号機(30万kW)が建設されるそうだ。投資するのはまたUniper社で2022年の運転開始予定。

4、5号機がなかなか動かせずに待機しているというのに、なぜ、同じところにまた新しいガス火力を作るのか? しかも、電気が不足した際の、稼働の優先順序は4、5機が先だというから、新設の6号機には本当に出番が回ってくるのか。一瞬、皆、何が何だかわからなくなってしまった。

ただ、その理由は意外と簡単のようだ。2022年に同州最後の原発イザール1、2号機が止まれば、年間約300億kWhの電気が消える。もちろん、さらに再エネも増やしていくらしいが、それでもおそらく電気が足りなくなる。

元はと言えば、北部ドイツで大量に余っている風力電気を南部に持ってくるという計画だったが、建設予定の7670kmのうち、現在、運開しているのはたったの950kmなので、それも2022年までにはとても間に合わない。

つまり、系統庁の考えでは、2022年からは、現在、待機ばかりさせられている4、5号機は出番が増える。それどころか、お天気の悪いときには、それでも足りなくなる。そこで、いざという時のためのガス発電所の新設を必要とみなしたらしい。




ただ、一方で再エネも増やすわけだから、お天気の良いときには、そちらが一斉に発電し、ガスを絞らなければならなくなる事情は変わらない。しかも、6号機はUniper社に欠損が出ない条件になっているらしいし、ドイツの法律では、その建設費も、のちに発電所に支払われる待機費用も、すべて「再エネ賦課金」として消費者の電気代に乗せて良いことになっている。ドイツのエネルギー政策は無駄と矛盾に満ちている。

このニュースでついに堪忍袋の尾が切れたのが、5号機に25.2%投資しているN-ERGIE社のCEOヨゼフ・ハスラー氏。

「ドイツは、いい加減に中央集権的な計画経済をやめて、市場経済に基づくエネルギー政策に立ち戻るべきだ! 高い投資の果てに廃墟だけが残るという間違ったエネルギー政策の犠牲者は、高い電気代を払わされている国民ではないか!」

ドイツの電気代はすでに高い。2017年には、ついにデンマークと並んでEUで第1位となった(30.5セント/kwh)。デンマークは物価水準の非常に高い国なので、そこの電気代と並ぶということは、ドイツ国民にとっては、電気代だけが突出して高いということになる。

しかし、エネルギー転換にかかる費用は、「再エネ賦課金」としてすべて国民の電気代に乗せて良いことになっているのだから、このままいけば、電気代はこれからもまだ上がる。そのうち、国民生活に支障が出始めてもおかしくない。

■原発がすべて止まれば…

BDEW(ドイツエネルギー・水連盟)によれば、ドイツで現在、計画中、申請中、あるいは建設中の新設ガス火力の案件は22基もあるという。そのうちの何機が建設まで漕ぎ着けるのかは不明だが、風力と太陽光電気は本当にゼロに近くなることもある。

ドイツのような高度な産業国では、1分たりとも停電が起こっては困るのだから、安定供給に万全を期すためには、ガス火力の新設は避けられないのだろう。

現在、ドイツのベースロード電源は、原子力、バイオマス、水力が担っており、この3つの電源が、24時間たえず発電してドイツの電気供給の25%から30%ほどを支えている。

今のところ、再エネ電気の変動を均しながら、柔軟に運転しているのが、ガス、石炭・褐炭で、全体の40%から45%(揚水も再エネの調整に使われているが、こちらは水を落としてしまえば、電気がない限り、次の水は上げられないので、いつも使えるわけではない)。つまり、原発、石炭・褐炭がなくなれば、頼りになるのはガスしかない。

すでに2017年、ドイツのロシアからのガス輸入は前年比で7.2%伸び、534億㎥と過去最高になった。これは、原発が2015年の6月に一基、2016年の12月に一基閉鎖されたことと関係している。ドイツでは、ガスにおけるロシアへの依存を3割以上にしないことが目標とされてきたが、すでに4割を超えている。

しかも、これから残りの原発7基すべてが止まれば、その依存率はさらに増えるはずだ。そのうえ、ドイツは膨大な再エネ発電の施設と、膨大なガス発電の施設を抱え、いつも、どちらかは十分に動かない、あるいは動かせない国となる。すべてが限りなくもったいない。

ロシアのガスは、バルト海を貫く海底パイプラインNord Stream 1(2011年に完成)により、直結でドイツに入る。現在はそれと平行したNord Stream 2の建設も進んでいる(ここだけはEUがアメリカと一緒にやっているロシア経済制裁など無視)。

ただ2月3日、すでにあちこちから、石炭火力を2038年までにやめるのは無理だという声が上がり始めた。私は時々、ドイツのやっていることは馬鹿げたことなのか、それとも100年先を見越した凄いことなのか、よくわからなくなる。


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