排外と融和のデモ応酬 仏紙襲撃、欧州で反イスラム拡大
source : 2015.01.13 朝日新聞 (ボタンクリックで引用記事が開閉)
仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件の後、反イスラム感情をかき立てる動きが欧州に広がっている。ドイツ東部ドレスデンで12日夜、事件後初めてとなる大規模な「反イスラム」デモがあり、参加者は過去最多の約2万5千人(地元警察発表)に膨れ上がった。対抗して「寛容な社会」を訴える集会もドイツ各地であり、参加者は全国で約10万人に達した。
12日夜、旧東独の古都ドレスデンの広場は国旗やプラカードを持った人々であふれた。「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(通称ペギーダ)を名乗る団体の反イスラム集会。参加者の腕や胸には、仏紙襲撃事件の犠牲者を悼む黒いリボン。同紙の風刺画を掲げた人もいる。
壇上の男性が声を張り上げた。「パリの事件は我々の(反イスラムの)行動が正しいと証明した」「イスラム過激派による欧州への宣戦布告だ!」
ペギーダは昨年10月から、1989年のベルリンの壁崩壊につながった東部ライプチヒの「月曜デモ」にならい、毎週月曜にデモを開催。ソーシャルメディアを使い、当初の数百人から規模を急拡大した。
活動方針には「西洋文化の尊重」「戦争難民の保護」など穏健な主張が並ぶが、デモでは「イスラム化阻止」をスローガンに排外的な主張が目立つ。多くの参加者は一見して、老夫婦や若いカップルなど普通の市民たち。職業も年金生活者からサラリーマンまで様々で、デモ初体験という人も少なくない。
組織の実態はよく分かっていない。地元報道によると、当局は極右組織の関与を確認したというが、ペギーダ側は否定している。
ペギーダに呼応し、類似団体が雨後の竹の子のように生まれており、小規模のデモを各地で繰り返す。
背景には、経済格差が残る旧東独を中心に、豊かさと職を求めて流れ込む難民や移民への根強い反感がある。昨年12月の独メディアの世論調査で、ペギーダに49%が「同情的」と答えた。勢いを増す新興右派「ドイツのための選択肢」(AfD)も「イスラム思想への反対は市民の当然の権利だ」(ルッケ党首)と理解を示す。
一方、ドイツでは、ナチスの過去の反省から人種差別や偏見に厳しい風潮がある。イスラム系移民が人口の5%を占め、難民の受け入れにも積極的に取り組んできた。一昨年の難民申請者数は全体で約12万7千人。シリアからの難民が特に増えており、今年は23万人に達するとされる。
DPA通信によると12日には、東部ライプチヒで約3万人や南部ミュンヘンで約2万人、首都ベルリンで約4千人など各地でペギーダに対抗する集会を開催。全国で計約10万人とペギーダを圧倒した。メルケル首相は同日の会見で「イスラム教徒はドイツの一部だ。ドイツはイスラム教徒や他の宗教の人々と平和的に共存したい」と強調した。
13日夜にもベルリンのブランデンブルク門前で、メルケル首相やガウク大統領も参加し、イスラム社会との連帯を呼びかける集会が予定されている。
ペギーダの動きはドイツにとどまらない。スペインでは、マドリードのモスクの前で12日に集会を開くと呼びかけた。だが直前になってツイッターで「当局の許可が出なかった」と中止を表明した。「不寛容」に反対する地元の市民団体は、朝日新聞の取材に「この数週間、イスラム憎悪の動きがネットを通じて急速に広がっている。集会も当局に通報した」と話した。
地元メディアは、マドリードや北部ブルゴスなどのモスクでも、「イスラム教徒は欧州から出て行け」「売春婦の子ども」などとののしる落書きが見つかったと伝えている。
AFP通信によると、ペギーダは12日、ノルウェーの首都オスロで集会を開き、約200人が集まった。スイスやオーストリアでも計画があるという。
英国では「多文化主義は間違い」と訴える英国独立党(UKIP)の支持率は8~9日の世論調査で18%。直前と比べて5ポイント上がった。英YouGov社のアナリストは「一過性かもしれないが、テロの影響があったように見える」という。
オランダの右翼・自由党(PVV)も党首が「社会の非イスラム化を」と訴える。フランスのテロ事件の後、支持が伸びているという。
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