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2017/03/30


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【難民政策の欺瞞】ドイツとトルコの罵り合いが、欧州に「最悪の結末」をもたらす可能性 また一つ、世界に新たな火種が出現した

 source : 2017.03.24 川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」 (クリックで開閉)







■メルケル氏をナチ呼ばわり

ここ1ヵ月、トルコがEUを相手に大暴れだ。とくに、ドイツとオランダの対トルコ関係が急激に悪化している。つい最近まで、毎日、トランプ氏の動向を非難がましく報道することに明け暮れていたドイツメディアも、今ではトルコ非難ばかり。

この騒動には、315日に実施されたオランダ総選挙と、416日に予定されているトルコの国民投票が深く関係している(いた)のだが、日本ではそこらへんがほとんど報道されない。

オランダの総選挙の結果はというと、極右だとか、ポピュリストだとか言われているヴィルダー氏(PVV・自由党)が負けて、現与党のルッテ氏(VVD・自由民主国民党)が再び第一党になった。メディアはこの選挙結果を寿ぎ、ヨーロッパの理性の証明などと言っているが、そんな単純なものではないだろう。

ルッテ氏が、迫り来る右派ヴィルダー氏の追い上げを辛くも振り切れたのは、選挙戦最後のギリギリになって、まさにそのヴィルダー氏の主張であった反移民政策を、巧妙に横取りしたからとも言えるのだ。

一方ドイツ政府も、これまでは、トルコ政府が自分たちに浴びせてくる火の粉は、大人の対応で乗り切ろうとしてきたが、ここに至って方針を変えたようだ。

トルコのエルドアン大統領が、メルケル氏をナチ呼ばわりしたことに対し、320日、ドイツ政府は強く抗議をし始めた。すると、21日、エルドアン氏が「ヨーロッパは第二次世界大戦直前のファシズム台頭と同じ状況」とさらにダメ押し。

22日、新ドイツ大統領、シュタインマイヤー氏が、就任スピーチでトルコに民主主義を要求するという異常事態。まさに泥仕合になっている(大統領は、本来は“政治的”であってはならない)。

■トルコの政治家は登壇禁止!

さて、この1ヵ月あまり、オランダとドイツで何が起こっていたのか。それをざっと時系列でおさらいしてみたい。

217日、トルコ系ドイツ人のジャーナリスト、デニス・ユジェルが、トルコ警察により拘束された。ドイツ国籍のジャーナリストがトルコで拘束されたのは、今回が初めてという。

ユジェル氏はドイツの大手紙“Die Welt”でトルコ批判記事を書いていた記者だ。“独裁者エルドアン"に立ち向かう勇気あるジャーナリストとして人気があった。当然のことながら、トルコ政府にとっては目の上のたんこぶ。特に、トルコでは禁止団体であるPKK(クルド人の政党)にインタビューをしたり、去年7月の軍のクーデターについてのトルコ政府の見解に疑問を呈したりと、トルコ政府の神経を逆撫でするようなことばかり書くので、腹に据えかねていた。

今回の拘束の直接のきっかけは、ユジェル氏が「レッドハック」というトルコのハッカーグループから入手した材料を使ったこと。「レッドハック」というのは、ウィキリークスのトルコ版のようなグループで、トルコではもちろん違法。テロリスト組織の扱いだ。

またトルコ政府は、ユジェル氏が1ヵ月もの間、イスタンブールにあるドイツ大使館の別館の敷地内に匿われていたことを指摘した。つまり今、ユジェル氏には、スパイ容疑や、テロの宣伝活動の容疑が掛けられている。

一方ドイツ側は、ユジェル氏の拘束は民主主義や言論の自由に対する冒涜であるとして抗議し、釈放を要求しているが、不思議なことに、ユジェル氏をドイツ当局が匿っていたという話にはほとんど触れない。いずれにしても、ユジェル氏は今もイスタンブールの刑務所にいる。

32日、バーデン−ヴュルテンベルク州の小さな町で開かれるはずだったトルコ人の政治集会で、トルコの法相の登壇にストップがかかった。トルコの法相がドイツで何をするつもりだったかというと、4月のトルコ国民投票への投票呼びかけだ。在外トルコ人たちにも参政権がある。それどころか、トルコの有権者の5%は海外に住んでいるという。

これまでドイツは、外国人に対しても、集会の自由や政治活動を認めてきた。ドイツにはトルコ系が300万人もいる。うちトルコでの有権者が140万人。ドイツはトルコの政治家にとっては重要な地盤だ。

そんなわけで、選挙前にトルコの政治家がドイツへ飛んできて、大集会が開かれることは、過去に何度もあった。何千人ものトルコ人が集まり、見渡す限りにトルコ国旗の波が揺れるのを見て、外国人の私は毎回、「ドイツ人のリベラリズム」の徹底に感心したものだった。ところが、今回はそれが禁止されたのだ。

さて、登壇禁止について説明を求められたドイツ政府は、「集会の許可は自治体の管轄」と逃げたが、ここまで大きな外交問題に発展する決断を、人口3万人にも満たない町の町長が勝手に下したはずはない。

しかも、その3日後の5日には、今度はケルンの近くでのトルコ経済相の登壇が禁止され、登壇場所を近郊の小さな町に移そうとしたところ、これも禁止された。理由は、治安が乱される恐れがあるとのことだが、かなり言い訳っぽい。

おかしかったのは、14日、ザーランド州の州知事が、それに乗じて同州でのトルコの政治家の登壇を禁止したことだ。しかしこの州では、トルコの政治家が集会を開く予定などなかった。

ザーランド州は、今月の26日に州選挙を控えており、現知事の人気は陰り気味。そこで、一種のトルコ攻撃で人気の回復を図ろうとしたことが見え見えになり、“ファントム(幽霊)集会”の禁止と揶揄された。

■オランダでは入国も拒否!

一方、このころオランダでも、トルコとの不協和音が鳴っていた。

311日、トルコ外相がオランダに入ろうとしたら、着陸許可が出なかった。かなり強硬だ。外相の目的地はロッテルダムだったが、結局飛べずじまい。

同日、やはりロッテルダムに入ろうとした家族・社会政策相は、外相が入国できないのを見て、ドイツから陸路で国境越えを試みた。ところが、国境は越えられたものの、ロッテルダムの総領事館への入館を阻止され、そのうえオランダ警察にドイツ国境まで退去させられた。これも異常な話だ。

総領事館の前で大臣らの到着を待っていたトルコ人たちは、それを知ってもちろん激怒。抗議はたちまち衝突と化した。

そこで、暴徒化したトルコ人を蹴散らすため、オランダ警察が犬を使ったり、放水をしたりした。自国でそれを聞いたエルドアン大統領は烈火のごとく怒り、「オランダ人はファシストである」と怒声をあげた。

トルコとオランダの関係がたちまち悪化したことは言うまでもない。しかも、事態はますますエスカレートしそうな勢いだ。

ただ、オランダのルッテ首相に都合のよいことに、これが国民に受けた。ここで見えてきたのは、今、ドイツでもオランダでも、トルコ攻撃をすれば国民の支持が得られるという事実だ。

そもそも、トルコに対するオランダ政府のこの強硬な態度は、元はと言えば、ウィルダース氏がこれまでずっと貫いてきたことだった。ただ、ウィルダー氏が言えばポピュリズム、国家主義と叩かれる。でも、ルッテ氏がやればOK

■メルケルにとっては好都合だが…

いずれにしても、ドイツも9月には総選挙を控えている。つい最近までは、メルケル盤石と思われていたが、1月にシュルツというSPDマンが狼煙を上げ、戦場をかき回し始めた。左右からの挟み撃ちで、メルケル首相の危機感は大きい。

そんなおり、CDUはこの“オランダ効果”をしっかり見届けたのだから、9月の選挙に向かって同じ作戦を取るだろう。そういう意味では、実は、トルコがドイツ政府をガンガン攻撃してくれているのは、もっけの幸いではないか。

これにより、CDUは容易に難民政策の転換を図れるし、怒って見せれば見せるほど、国民は満足する。しかも、右派のAfD(ドイツのための選択肢)の勢力を削ぐこともできるし、SPDとの政策の差別化も明確にできる。一石四鳥だ。

ただ、トルコとドイツの関係は、ますます悪化するだろう。トルコ系を300万人も抱えているドイツとしては、予断を許さない。

ドイツにいるトルコ系は、すでにドイツに同化してしまっている人たちも多いが、これがきっかけで心の中のトルコ人アイデンティティーを復活させる人もでてくるかもしれない。あるいは、ドイツ国内でトルコ社会の分断が起きる可能性もある。ドイツ政府としては、さじ加減の難しいところだ。

そのうえ、このままでは満身創痍のEUはますますおかしくなる。実際、トルコは、15年に交わした難民合意を見直すと脅しをかけている。

もともと疑問符の多く付いた合意ではあったが、これをトルコが蹴飛ばせば、現実問題として、あっという間にトルコにいる中東難民がギリシャの島に向かってボートを漕ぎだす。トルコはすでに250万人の中東難民を保護しているのだから、EUとしては、想像するのも恐ろしいシナリオだ。

政治家やメディアは、口を開けば“民主主義”と言うが、EUでは各国の内部事情がぶつかり合うばかりで、民主主義がどこにあるのか、今、よく見えない。


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