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2017/12/30


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2018年、「EU崩壊」がいよいよ現実味を帯びてくる 難民、民族独立、そしてドイツ弱体化…

 source : 2017.12.29 川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」 (クリックで開閉)






■難民流入とテロの恐怖

2017年も残りあと3日。あっという間の一年だった。去年のイギリスのEU離脱騒動で引き起こされたEUの弱体化が、さらに進んだ一年でもあった。EUのアキレス腱は、言うまでもなく、難民だ。

4世紀から5世紀にかけて、北ヨーロッパにいたゲルマン民族が次第に南下して、西ローマ帝国を滅ぼし、最終的にヨーロッパをズタズタにしたが、今、起こっているのもそれと似ている。中東やアフリカから、凄まじい勢いでどんどん北上してくる人たちによって、EUという帝国がバラバラになりかけている。

2017年の1月1日は、「イスラム国」のテロで明けた。イスタンブールの高級ナイトクラブで大晦日から新年にかけてのパーティーが繰り広げられていたところに、イスラム国のテロリストたちが押し入り、39人を殺害した。犠牲者にはドイツ人も含まれていた。

トルコは、すでに300万人もの中東難民を庇護している。2015年にドイツが受け入れた90万人近い難民は、トルコにいた難民がゴムボートでギリシャに渡り、バルカン半島を北上してやってきたケースがほとんどだった。

その中に、過激なイスラムのテロリストが混じっているかもしれないと警告する人たちは当時もいたが、ドイツ政府はその声を「国民の恐怖を煽るポピュリズム」と蹴飛ばし、難民を入れ続けた。そして、その後まもなく、EUでテロが起こり始めたのだ。




あろうことか、ドイツの内務省は今頃になって、難民資格を取れなかった難民が行方知れずになっているケースが多数あると発表した。今年のクリスマス・マーケットはどこもかしこも、すごい数の重装備の警官に守られていた。

現在、EUはトルコに莫大な経済的援助をして、これ以上、難民がEUを目指して海に漕ぎ出さないように見張ってもらっている。

ドイツ人は、エルドアン大統領の政治を、非民主主義だ、言論弾圧だと非難し続けているが、この国で自由な民主政治など敷いたら、あっという間に治安が乱れ、それどころかクルド族も交えた内戦状態になる可能性さえある。そうなれば、トルコにいる中東難民が一気にEUに流れ込み、EUは崩壊する。

ドイツ国内にはすでに300万人ものトルコ系移民がいるので、トルコ本国の混乱はたちまちドイツに飛び火し、ドイツは混乱の坩堝となるだろう。だから、本来ならドイツ人は、現在のエルドアン大統領の強権的な政治手腕に感謝しなくてはならない。

そんなわけで現在、トルコ経由の難民は減っているが、アフリカ大陸からの難民は止まらない。そのためEUは、アフリカの地場産業の振興だとか、青少年保護という名目でそちらにも経済援助をしはじめた。しかし、それで難民の波が止まるなら世話はない。

■EU内に走る幾つかの亀裂

押し寄せる難民で身動きが取れなくなっているイタリアやギリシャの窮状を救うため、EUが大慌てで、そこにいる難民を皆で割り当てを決めて引き取ることにしてすでに久しい。ところが、東欧の国々が未だに難民の引き取りを拒否しているため、この態度が自己中心的であると非難され、EU内でいわゆる東西の確執が続いていた。




ところが、12月18日にオーストリアで就任したクルツ首相が、このEUの「常識」をあっけなく覆した。若年31歳の新首相は、「難民を受け入れるかどうかは、各国が独自に決めるべきだ」と宣言し、EUの難民政策の修正を求めたのだ。東欧諸国が我が意を得たりと活気づいたことはいうまでもない。

実はEUでは、一部の国々がどんなに綺麗事を並べようが、どの国もずいぶん前から、いかにして難民を入れないかということで苦慮している。EU内では国境検査をしないと定めたシェンゲン協定もすでに実質無効だ。これまでは、シェンゲン域内の国境はフリーパスだったが、今では電車でも道路でも、国境のところで警官がパスポートを調べている。

クルツ首相の発言を機に、来年はEUの難民政策が真摯な仕切り直しに入ると思われる。

EUの分裂を進めるもう一つの衝撃的な事件は、現在進行中の、スペイン・カタルーニャ州の独立騒ぎだ。カタルーニャの州都はバルセロナ。

10月1日に、カタルーニャ自治州の独立を問う住民投票が行われ、その結果、独立派が勝利し、カタロニア共和国として独立宣言を行うにまで至った。カタロニア人は、過去の度重なる弾圧の歴史から、スペインの中央政府を恨む要因が多々あるようだ。特にフランコ独裁下では、カタルーニャ語や、カタロニアの伝統文化の継承までが禁止された。




とはいえ、現在、カタルーニャ自治州は国の稼ぎ頭なので、勝手に独立などされると、スペイン政府としては大いに困る。そこで政府は、独立を主導したプチデモン州知事に、「国家反逆罪」、および「扇動罪」を着せた。追われる身となったプチデモン氏は幹部数人と共にブリュッセルに逃亡、そこからビデオで、カタロニア独立を呼びかけている。副首相らはバルセロナに残ったので、拘束されている。

スペイン政府は事態を収拾するため、カタルーニャ州議会を解散し、12月21日に前倒し選挙を敢行した。いきおい、国外逃亡中、あるいは留置中の政治家たちが選挙運動を繰り広げるという異常事態となったが、投票が終わり、蓋を開けてみたら、独立賛成派が再び過半数を獲得した。

つまり、選挙で独立派を一気に潰すつもりだったスペイン政府の思惑は見事に外れ、事態は収束どころか、ちょっとやそっとでは解決しそうにないほどこじれてしまった。もちろん、市民も独立賛成派と反対派とに真っ二つに分かれて、途方に暮れている。

ところが不思議なのは、EUがこれを仲介するでもなく、スペインの内政問題であるとして、無視を決め込んでいることだ。EUには、他にも独立志望の少数民族を抱えている国が幾つかあるため、下手に触ると収拾がつかなくなるという懸念があるのだろうが、このままでは EUの求心力はさらに低下するばかりだ。

■ドイツの混乱はまだまだ続く




そんな中、ドイツでは12月25日、恒例の大統領のクリスマス・スピーチが放映された。シュタインマイヤー大統領はSPD(社民党)の政治家で、今年の3月までは、大連立のメルケル政権で外相を務めていた。

その彼の、大統領として最初のスピーチが、驚くほど空虚だった。国民を安心させ、励ますばかりで、ドイツ国が直面している深刻な問題や、国民が感じている不安などは巧みに回避する。

しかも、9月の選挙以来、いまだに組閣ができていない政局については、「今までになかったことではあるが、ドイツの基本法はそういう事態にもちゃんと備えがあり、現在はその決まりに従ってことが進んでいる」。

つまり、不安に思う必要は何もない。「国民は国を信用しなさい」というのがスピーチの肝だ。

なぜ、この政治的混乱が起こったのか、なぜ警官が残業に残業を継いで、寒い街角に24時間立っているのか、それらには一切言及なし。「無力感や無関心は克服できる」、「人に責任を押し付けるのではなく、自分たちの責任を認識しよう」だとか。

シュタインマイヤー氏は、ついこの間までの施政者だ。現在の混乱に一役も二役も買っていることは間違いない。なのに、それはすべて棚に上げ、空疎な綺麗事を並べ、挙げ句の果て、「さあ、これらの問題を克服するのが、あなた方国民の課題ですよ」とハッパをかけている。自分の責任はいったいどこへ行ったのか。国民は憤りを通り越して、唖然だ。

1月1日には、これまた恒例の首相の新年スピーチがある。現在、暫定首相であるメルケル氏が何を話すかは謎だが、大統領のスピーチが国民のブーイングを浴びたからには、同じような綺麗事を並べるわけには行かなくなったはずだ。

政局の混乱はまだまだ続くし、大連立ができなければ再選挙もありうる。内閣の成立はいつになるのか、まるで見えない。このままいくと、ドイツの混乱はEUの混乱に拍車をかけることになるかもしれない。いずれにしても、EUが来年、激動の年を迎えることは、すでに織り込み済みのようだ。

皆様、今年も一年、ありがとうございました。良いお年を。


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