source : 2012.02.06 日刊SPA! (ボタンクリックで引用記事が開閉)
ダブル選挙で圧勝した「大阪維新の会」の橋下徹市長が本格的に動き始めた。「大阪都構想」ばかりが注目されているようだが、革新的な政策はそれだけではない。1月4日の年頭会見では野田首相の消費税増税案を「面白さも何もない」と酷評、若者優遇政策や脱原発&再生可能エネルギー促進など、国がなかなか行うことができない改革案を次々と発表している。そこで、橋下氏をよく知るキーマンを直撃、その「革命」の実態をリポートする。
◆市長のブレーン・古賀茂明氏が語る「国ができないことを大阪がやる」
「既得権益の破壊」を貫く橋下氏の周りには、元経産官僚・原英史氏、慶応大学の上山信一教授ら、各分野の改革派のエキスパートが集結。なかでも重要な役割を担うのが、大阪府市統合本部特別顧問として、脱原発や公務員制度改革を担当する元経産官僚の古賀茂明氏だ。官僚時代に公務員制度改革や発送電分離(電力自由化)に取り組んだ経験を買われての抜擢だった。その古賀氏に、橋下改革のポイントについて語ってもらった。
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橋下市長は関西電力の株主総会で「脱原発(原発依存度の引き下げ)」と「発送電分離に向けた体制整備」を提案し、再生可能エネルギーへの転換を進めようとしています。イデオロギーとしてではなく、大阪市民や企業の実利を守るためです。
福井県には関電の「美浜原発」「大飯原発」「高浜原発」などの原発が集中していますが、もし事故が起きれば、莫大な被害を地域社会に与え、琵琶湖が放射能で汚染される恐れもあります。関西圏の住民の命と安全に直結する問題なのです。また関電にとっても脱原発で、事故による企業破綻のリスクを減らしたほうがプラスです。
関電をはじめ電力会社は「脱原発はできません」と言っていますが、地域独占体制のもとで甘やかされた人たちの発言には、全く説得力がない。そこで9%の関電株を持つ、筆頭株主の大阪市が6月の株主総会で脱原発の提案をしようということになったのです。
◆関西広域連合で「第四の革命」を
ただし、堂々巡りになる可能性も高い。そこで、基礎的情報をまず公開してもらい、それをもとに脱原発の施策を3月頃までにまとめようと考えています。
提案を実現させるためには、大阪市以外の株主の賛同も欠かせません。そこで、関電の大株主である神戸市や京都市をはじめ、個人株主や機関投資家にも呼びかけたいと思っています。
また、世界的に進行している「第四の革命」(再生可能エネルギーへの転換)のうねりを関西圏に取り込みたいと考えています。滋賀県知事も脱原発に熱心で、関西広域連合として取り組んでいく。この地域には、パナソニックなど再生可能エネルギーに強い企業があります。今は関西圏から工場が出ていっていますが、脱原発依存が進んで再生可能エネルギーが拡大していけば、関連企業が育っていき、若者世代を含めた雇用も増えます。電力会社の地域独占という既得権を打破したところに、新たな成長分野が生まれてくるということです。
すでに「有識者チーム」が結成されていますが、さらに内外から公募して、電力改革を進める人材を集めたい。「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長ら、エネルギー問題に強い人に特別顧問就任をお願いしています。
【2】【橋下徹の革命性】公務員人事は民間以上に厳しく
source : 2012.02.07 日刊SPA! (ボタンクリックで引用記事が開閉)
大阪府市統合本部特別顧問として、脱原発や公務員制度改革を担当する元経産官僚の古賀茂明氏に、橋下改革のポイントについて語ってもらった。
昨年9月、「大阪維新の会」が府議会に「職員基本条例」案を出しましたが、同じようなものを大阪市でも出します。公務員にはリストラがないわけですから、人事は年功序列ではなく、民間以上に厳しくすることが重要。現在は大して働かなくてもそこそこの地位で高給をもらっている人もいますが、これを厳しくしていく。「頑張った人が評価される」という信賞必罰にするのです。若い人にもこれまで以上にチャンスを与えることになります。特に幹部職員は任期制にして、市役所内外から有能な人材を公募します。私と一緒に公務員制度改革に取り組んだオリックスの機谷俊夫氏が、市総務局人事部参与に起用されました。4月の市の組織改正後、市長のもとで人事を担う中心メンバーとなります。外部から来た人がいきなり人事のトップになるというのは、画期的なことです。
大阪都構想を実現する実行部隊となる24区長も公募します。区長も若い人たちを抜擢する場としたいと考えています。
また1月4日、大阪市役所に目安箱をつくったところ、若い職員から提案や告発などがどんどん集まってきています。マスコミは「大阪市役所対橋下市長」というような構図で報道しますが、橋下市長を支持している若い職員も多い。対立しているのは、いい地位を維持したいと思っている課長以上の一部の幹部クラスが中心です。これは、霞が関の官僚とも共通することで、若い世代は改革に前向きな人のほうが多いのです。
【3】【橋下徹の革命性】組合に政治介入させない
source : 2012.02.08 日刊SPA! (ボタンクリックで引用記事が開閉)
大阪府市統合本部特別顧問として、脱原発や公務員制度改革を担当する元経産官僚の古賀茂明氏に、橋下改革のポイントについて語ってもらった。
◆政治勢力としての「組合」の介入をなくす
大阪市役所で特徴的なのは、組合が非常に強い(組織率は90%)ことなのですが、組合に関する告発もあります。これまで組合は、通常の団体交渉以外に、選挙運動などの政治活動をやってきました。橋下市長と実態調査を進めていますが、勤務時間中に選挙活動をやっていたことも明らかになりました。こうしたことを改めていかなければならない。
「組合」と言うと、「弱い労働者の権利を守る組織」という印象を受けますが、実際は違う。彼らは市職員としての権限も持ちながら、選挙となれば関連団体に対して働きかける。そして、市長と手を結んで一つの政治勢力となる。これが今回の大阪市長選でした。市役所全体が選挙マシンとなった。現職市長の対立候補は、市役所全体を相手に闘わないといけないというのは公正・公平ではありません。
また「組合が人事に関係している」という告発もありました。「昇進試験を受ける際には上長が推薦するが、そこに組合が口を挟んでくる」というのです。その結果、「組合に睨まれたら昇進できない」という恐れが広がり、組合が嫌う改革案を提案しにくい雰囲気がある。こうしたことは根絶しないといけない。国ができない改革を、まず大阪がやる。「大阪から日本を変える」というキャッチフレーズのもと、橋下改革を手助けしていきたいと思っています。
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【古賀茂明氏】
’80年に通産省(現経産省)に入省。産業再生機構執行役員や公務員制度改革推進本部事務局審議官などを歴任。改革派官僚として活躍したが、’11年9月に退職
【4】京大名誉教授「橋下徹はダム中止を決断できた。民主党はできなかった」
source : 2012.02.10 日刊SPA! (ボタンクリックで引用記事が開閉)
◆役人をコントロールできることが「脱ダム」を可能にした
ダム問題でも、橋下市長と民主党政権の違いは決定的です。橋下市長は大阪府知事時代、府営の「槇尾川ダム」(和泉市)を推進していましたが、私をはじめ脱ダム派の主張にも耳を傾けて、見直しに転じました。そして、本体工事に入ったにもかかわらず、槇尾川ダムの建設中止を決めたのです。
これに比べて民主党政権は、政権交代の時のマニフェストに掲げた目玉政策「八ッ場ダムの建設中止」を撤回してしまった。
なぜ橋下知事(当時)はダム中止に踏み切れたのに、民主党は逆に中止撤回に追い込まれたのか。その差は、役人をコントロールできるのか否かにあると見ています。政権交代直後、私は脱ダム政策について前原氏と大臣室で会い、「八ッ場ダムを検証する『有識者会議』をつくるのはいいが、委員の人選だけは国交省に任せるな」と助言していましたが、前原氏は河川官僚に人選を任せてしまったのです。これに対し、大阪市はトップの方針がすばやく浸透しています。橋下市政がスタートした途端、市長は局長級・部長級幹部6人の交代を断行しました。そして、あれだけ抵抗をしていた大阪市役所が、新市長の指示に従うようになった。幹部を変えれば、その部下は言うことを聞くのです。
橋下市長の評価が上がっているのは、大胆な改革策の実現をしてくれる指導力があると見られているためでしょうし、一方、民主党政権の支持率が低下しているのは、官僚主導に陥っていることを見抜かれているためだと思います。
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【今本博健氏】
京都大学名誉教授(河川工学)、淀川水系流域委員会元委員長。橋下氏に、ダム政策に関する助言を行う
【5】橋下改革に疑問の声も続出!
source : 2012.02.12 日刊SPA! (ボタンクリックで引用記事が開閉)
「脱原発を訴えながら、なぜ放射能を含むガレキの受け入れを表明するのでしょうか?」
そう語るのは、生活協同組合コープ自然派・ピュア大阪理事の黒河内繁美氏。黒河内氏はガレキ受け入れについて府側と交渉。府は環境省の「(ゴミ処理施設の)バグフィルターで99.99%のセシウムを除去できる」という見解を基に「問題ない」と主張している。
しかし、山内知也・神戸大学教授(放射線物理学)は「バグフィルターで捕捉できるのは、塩化セシウムとして固体化している場合。高温のゴミ焼却場では、セシウムは沸点が低いため、ガス化してバグフィルターをすり抜けてしまうかもしれない」と指摘する。
「仮に環境省の見解どおりだとしても、ゴミ処理場の排気量は膨大で、大量のガレキを燃やせばそれだけ放射能が周囲に放出されることになります」(山内教授)
黒河内氏は「燃やしたあとの放射能を含む灰の処分も課題」と訴える。「海上埋め立て地・大阪湾フェニックスに埋め立てることが検討されていますが、環境省は放射能汚染物質に関しての海上埋め立て指針を示していません」。
就任後の記者会見で、焼却で灰の中の放射能が濃縮されること、海での埋め立てで流出の恐れがあることを「全く知らなかった」と認めた橋下市長。今からでも黒河内氏らの声に耳を傾けるべきかもしれない。
また、保育園の「待機児童ゼロ」目標も、橋下市政では逆効果になる恐れがある。NPO法人「しんぐるまざーず・ふぉーらむ関西」の大森順子事務局長はこう語る。
「コスト削減を迫られる民営化で、サービスの低下を引き起こす可能性があります。保育園側が母子家庭の子供を敬遠するなど、本当に必要としている母親が利用できなくなるかもしれません」
さらに、橋下市長自身の税金浪費も追及されている。市民団体「おおさか市民ネットワーク」のメンバーらは、1月12日、松井知事に対し「旧WTCビル(現・大阪府咲洲庁舎、大阪市住之江区)の購入・移転費で浪費した96億3000万円を橋下前知事に返還させろ」との住民訴訟を大阪地裁に起こした。原告の一人、ジャーナリストの西谷文和氏はこう憤る。
「埋め立て地に立つ旧WTCビルは以前から老朽化が懸念されていました。しかし橋下氏は府庁舎の一部移転を強行。不安は的中し、昨年3月、遥か彼方で起こった東日本大震災で、旧WTCビルは350か所も損壊。既に費やした96・3億円のほか、耐震工事費に約130億円かかるとも見られています。橋下氏は『地震は想定外だった』と開き直っていますが、他人に向ける厳しさを自分にも向けるべきでしょう」
【6】橋下人気は「若者の圧倒的支持」にある 三浦博史氏
source : 2012.02.12 日刊SPA! (ボタンクリックで引用記事が開閉)
私は昨年の大阪ダブル選挙の分析を行いましたが、橋下氏圧勝のカギは若者の圧倒的支持によるものでした。既成政党の基礎票をどれだけ取ったかは出口調査結果(政党支持率と両者の投票割合)から推測できますが、これはほぼ拮抗していた。どこで差がついたかというと、無党派層の得票。普段はあまり投票場に行かない20〜30代が選挙に行き、橋下さんに票を入れたようなのです。
この世代が動いたのは、大阪市役所改革を叫び続けたから。討論会でも平松前市長への直接的な批判は極力せず、「市民は守るけど市役所は守らない」と強調し続けた。若い世代の心に直接響くことを、一つか二つに絞って訴えた。そういう意味で天才的戦略家だと思う。私も選挙プランナーとして、これまで若い世代の投票率を上げようと試みてきましたが、なかなか思いどおりにはいかないもの。しかし橋下氏はそれをやってのけた。
橋下市長は当選後、高齢者にも負担を求める「積み立て方式への転換」(世代間格差を是正する年金制度の抜本的改革案)を主張するなど、若者目線の政策を訴えていることは注目。世代間格差を放置したまま消費税増税に突き進む野田首相よりも評価されるだろう。また小泉元首相もオバマ大統領も当選後、若者のために特に汗を流したという記憶はない。
「積み立て方式への転換」は本来、霞が関や永田町の人たち、例えば「税と社会保障制度の一体改革」に取り組む国会議員や財務省や厚労省系のシンクタンクなどが提唱していないとおかしい。橋下市長の圧勝後、すり寄る政党・国会議員は多いが、自ら高齢者の票を失ってでも若者優遇政策を訴える政治家は出てこない。中央政界がそろって橋下市長にすり寄る現状を見る限り、今年の日本の政局は橋下市長を中心に動くことは間違いない。
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【三浦博史氏】
総合選挙プランニング会社「アスク」代表取締役。沖縄県知事選や東京都知事選などに関わり、高い勝率を誇る
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